日本中が待っていたヒーロー瀬戸熊の帰還!内川の第2形態とは? RTDリーグ2018セミファイナル最終日レポート

10/14(日) 15:00よりAbemaTV「麻雀チャンネル」にて放送された、RTDリーグ2018セミファイナル最終日(4日目)の様子をお届けします。

レポートは、鈴木聡一郎(最高位戦日本プロ麻雀協会)がお送りします。


▼▼▼1回戦:第2形態に進化した内川の強さ▼▼▼

4日間にわたるセミファイナルも最終日の全5回戦が始まる。

3日目の連勝で突如として決勝進出に名乗りを上げた内川だが、ここまでの道は険しかった。

2016年に行われた第1回麻雀プロ団体日本一決定戦で活躍し、RTDリーグに声がかかった内川だったが、2017、2018シーズンともに、成績もさることながら内容も良くなかったように見えた。

一言でいうと、「怖さがない」という表現になるのだろうか。

プロ連盟のA1リーグにいるのだから、強いのは当たり前である。しかし、他のRTD戦士たちにある怖さのようなものが少ないと感じた。

わりとまっすぐに手を進め、リーチと言われれば粘らずオリ始める。仕掛けもあまり入れず、相手に動きがあればすぐにオリる。かといって、仕掛けの精度も高くなかった。淡白で、あまり良い循環になっていないなという印象を受けた。

しかし、2018シーズンの中盤辺りから徐々に覚醒し始めると、300あったマイナスを完済し、現在セミファイナル最終日を迎えて150ものポイントを持っている。

ここに至るまでに何か変化があったのだろうか。


この日の対局を終えると、内川が私のところにやってきて話してくれた。

内川「(自分の)麻雀、けっこう変わったでしょ?」

― そう、けっこう変わったよね。ぼくが今日一番びっくりしたのは、1回戦目の東2局かな。

そう言って私が提示したのが、この局。

仕掛けを想定せずに門前で決め手を作りにいくことが主体であった1年前の内川ならば、9mから打ち出し、4pか7pにくっつけてのタンピンドラ1を本線に進めそうな配牌である。

しかし、内川はここから打4pとすると、すぐに7pも打った。

内川「かなり変えたんですよね。今まで、RTDリーグでは仕掛ける手も6ブロックにしてしまっていて、1牌が押せないケースが多かった。だから、今年は5ブロックにするときと6ブロックにするときをはっきりさせたんですよ」

― なるほど。だから、かわし手を入れやすくなって、仕掛けが増えたんだ?

内川「そうですね。そうしないと、このルールとメンバーだと戦えないとわかりました」

端的に言えば、6ブロックに構えるとは、こういう配牌から4pや7pを引っ張り、6つ目のターツを作ることを指す。一方で、5ブロックに構えるとは、4pや7pをさっさと切ってしまい、安全度の高い字牌と取り換えたり、フォロー牌を残すことを指す。

6ブロックに受けると、危険度の高い数牌が余剰牌として残るため、後手を踏んだときに無スジの余剰牌を押さなければならず、押し返しにくくなる。

内川「今までは、仕掛ける手でもわりと6ブロックに受けちゃってたんですよね。だから、仕掛けてからオリることも多くなってた。それを変えました」

つまり、第2形態に進化した内川は、この配牌を「仕掛ける手」と位置付けたわけである。

すると、佐々木のリーチを受けた後に中をポンして、安全度の高い東を打ち出してイーシャンテンに構える。残っている9mも全員に対するアンパイだ。

5ブロックに構えるから、後手を踏んでも鳴いて押し返しやすい。

そして、テンパイまでたどり着くと、押しに押して2,900のアガリ。

スリムに構えてテンパイまで安全にたどり着けるため、押し返せる。この仕掛け返してのアガリが今シーズンの中盤からは多く、内川の怖さの1つになっているように感じた。

すると、このアガリを皮切りに、連荘して大きなトップで3連勝目を飾る。これでかなり決勝進出が濃厚となった。


▼▼▼2回戦:瀬戸熊の決め手と裏側での白鳥の対応▼▼▼

瀬戸熊はドラを打ってダマテンに構えると、1巡回してツモ切りリーチといった。アガリを取りにいったのである。

このリーチはかなり怖い。

そもそもドラを切った瀬戸熊が不十分な形になっていることは少なく、ツモ切りリーチに踏み切るのだから、なおさら十分な手牌が想像される。

例えば、ホンイツのリーチだ。実際に、対峙した白鳥はこう話す。

白鳥「ドラを切ってきてチートイツが消えたから、メンホンで3面張前後の多面張が濃厚かなと思ってた」

なるほど。確かに、チートイツならドラ単騎に受けそうであるため、ホンイツの多面張が本線になるか。

しかし、そう語る白鳥がマンズを打って押し返していくのだからすごい。

絶好の8s単騎でテンパイした白鳥は4sから押し始めると、2m、白、そして4mをも押した。

白鳥「メンホンチートイだと放銃したら18,000からだから押しにくいけど、チートイじゃなければ放銃しても12,000で済むこともあるから」

みなさんなら、メンホンリーチとわかっているところに、無スジの2mや4mを押せるだろうか。どんなにアガれそうな8s待ちといえど、なかなかできることではないと思う。

だが、次に掴んだ5mでさすがにオリ。

白鳥「4mいっちゃったから、おれの中ではもう残り2スジなんですよね。さすがに5mは押せなかった」

ベースは5m8m+αと3m6m9mの2択ということなのだろう。そう考えると、50%で12,000以上に当たる5mはさすがに押せない。

ただ、この結果、手の整った猿川が西を押して瀬戸熊に18,000放銃となる。

これを見た白鳥は少し後悔をにじませた。

白鳥「リーチの方がよかった気がしてきた。そうすれば、脇がいきにくくなって、結果のような横移動を防げたかもしれない」

結局、これが決め手となって瀬戸熊がトップ。最終戦での白鳥との着順勝負に持ち込んだ。


▼▼▼3回戦:3倍満拒否の倍満ツモ!内川も神々の戯れに参加▼▼▼

内川が發、白とポンしてこの倍満テンパイ。

すると、次巡に引いた9sを何事もなかったかのようにツモ切った。

シャンポンに替えれば3倍満になるのに、である。

内川「さすがにもう8s手出しはできないですよね(その付近が待ちとバレるため)。上家が4sを切っていて、それをチーしてないし、7s出アガリまで期待できると思っていたので」

前提として8sの切れ具合から7sがかなり良さそうというのがあるのだが、実に冷静な判断だ。確かにこの点数状況では24,000も36,000も大差はない。

それなら、アガりやすい方である。

そして、8,000オール。これでもう決勝進出はほぼ決まりで、ここからは1つでも上の順位で決勝にいくことを目指すこととなる。

そのため、3本場にはこのピンフのみですぐに出た7mに見逃しをかけた。

内川「打点を作りにいきました。場がフラットだし、4,000オールぐらいじゃないとアガらないよと思ってたんですよね」

結局、たろうが仕掛けた直後に7mをツモってしまい、アガリを選択するのだが、ついに内川もたろう・小林という神々の通過順位争いに参加するところまでやってきた。


▼▼▼4回戦:勝又が見せた最後の粘り▼▼▼

最終戦1卓目は、1278位卓となる。

ここでの注目はほぼ勝又に絞られる。勝又が決勝に進出するためには、80,000点以上のトップが最低条件。80,000点のトップを取っておくと、3456位卓で瀬戸熊・白鳥が2人揃ってマイナスになったとき、決勝進出の目が出る。

その勝又が、東1局に3,000・6,000のツモアガリを決めるのだから、見ている方としては期待してしまう。

そして、南1局では、3軒リーチをかいくぐって2,000・4,000。

結果的には一発ツモだったが、自分の条件を満たすためにはいずれにしてもオヤ番での爆発が必要になるため、2軒リーチの時点ではアガリを優先してダマテンを選択した。

しかし、粘りもここまで。オヤが落ちると、役満条件を目指すのではなく、トップを守り切ることを優先し、3456位卓で小林がこの世のものとは思えないほどの大トップを取って全員を大きく沈めることに賭けた。


▼▼▼5回戦(最終戦):日本中が待っていた瀬戸熊のダマテンプッシュ▼▼▼

普段、何気なく会話を交わす白鳥・佐々木・瀬戸熊も、最終戦開始前には言葉を交わさず、それぞれが少しずつ距離を取って集中力を高めていた。


最終戦では、瀬戸熊との着順勝負条件である白鳥が1人沈む展開で南1局を迎える。

しかし、白鳥もここで黙っているような男ではない。

そんな白鳥にチャンス手が入った。

すると白鳥、1枚切れの中を引いてイーシャンテンを崩す打2mとする。確かに3mは2枚切れなのだが、このイーシャンテンを崩せる者がいるのだろうか。

ペン3mを残すぐらいなら、マンズの9m付近でもう1メンツか、中を使った三元役という狙いだ。

そして、これが大三元テンパイとなる。

南ツモでも3倍満。その結果は・・・

ここは横移動で終わり、局が進んでいく。

すると、南3局で瀬戸熊が連荘の末、12,000を小林から直撃。

これは決定打だ。瀬戸熊がトップを「守って」終了、普通はそう思う。

しかし、そこに座っているのはスタイリッシュな熊であり、人にあらず。

役ナシ・ドラナシ・愚形という自然界の三重苦を背負ったような手で、瀬戸熊はドラそばの3sをノータイムで押した。ただ、この辺りまでは、安牌もないしな、と思える。

しかし、瀬戸熊はノータイムでのダマテンプッシュをやめない。

2mは元より、アンパイができた後のこんな7pもノータイムでツモ切っていく。

この瞬間、日本中で最も盛り上がりを見せたのは、RTDリーグ控室であったのではないかと思う。

その熱の中心にいたのは勝又である。

気づくと、勝又が本当にうれしそうな顔で画面を見つめていた。

勝又「もうこれ、瀬戸熊さん、今ならドラでも切りますね」

テレビ画面に映る憧れのヒーローを見る子供のような、そんな表情だった。

内川・猿川も画面を見つめる。気づけば、たろうも食い入るように視線を向けていた。

その後、4mも3mも押した瀬戸熊が、4枚目の7mをツモって700オール。

その瞬間、帰ってきたヒーローについて勝又が語り始めた。

勝又「これをアガれるのは瀬戸熊さんだけ。鳳凰位連覇したときの押しだわ。これに何回もやられたんですよ。いや、もしかしたら前原さんはアガってるかも。でも前原さんはリーチしてるんじゃないかな」

すると、対局室から戻ってきた白鳥も加わる。

白鳥「あれは感動したわ。おれ、ニヤけそうになっちゃったもん」

負けたのに、なぜかちょっとうれしそうである。

白鳥にしても、納得の負けなのだ。


おかえり、ヒーロー。

ヒーロー瀬戸熊の帰還を、日本中が拍手で迎えた。


この結果、決勝進出はこの4名。

左分け、右分け、左分け、真ん中分けである。

変幻自在のたろうか、かわし手の小林か、第2形態に進化した内川か、帰ってきたヒーロー瀬戸熊か。

決勝は10/20開幕!


鈴木聡一郎(最高位戦日本プロ麻雀協会)


■次回10/20(土)15時から、決勝1日目をAbemaTV 麻雀チャンネルにて生放送予定


藤田晋 invitational RTDリーグ

トッププロを招聘した長期リーグ戦「藤田晋 invitational RTDリーグ」。BLACK・WHITEの2リーグ戦を経て、準決勝・決勝にて年間チャンピオンを決定。AbemaTV麻雀チャンネルにて独占放送中のオリジナル番組です。

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