白鳥が投げる、ペナントレースならではの遊び球! RTDリーグ2018 BLACK DIVISION 27-30回戦レポート
5/7(月)および5/10(木)21:00よりAbemaTV「麻雀チャンネル」にて放送された、RTDリーグ2018 BLACK DIVISION 27-30回戦の様子をお届けします。
レポートは、鈴木聡一郎(最高位戦日本プロ麻雀協会)がお送りします。
▼▼▼BLACK 28、30回戦:名投手白鳥の遊び球▼▼▼
前回までの成績はこちら↓
「遊び球」という言葉がある。
野球において、投手が勝負球の前にあえて逆側などに外すボール球のことだ。
自らカウントを悪くするため、一見ムダに見えるこの遊び球。ところが、実際には質の異なる球を直前に見せておくことで、次に投げる勝負球が決まりやすくなるのだという。
1試合で少なくとも1チーム27打席、プロなら試合数も年間100試合以上となる野球らしい考え方だなと思った。
しかし、ルールが変われば方法論も当然変わる。
「巨人菅野3球勝負宣言、球数制限WBCへ遊び球なし」 日刊スポーツ
2017年のWBC前、日本代表の菅野投手は「遊び球を投げない」と言い放った。
その裏には、WBCの「球数制限」があったという。1試合の中で投球数が一定数に達すると、強制的に交代しなければならないというルールが存在したのである。
つまり、通常のペナントレースは長距離走。一見ムダな選択なども織り交ぜながら、半年かけて優勝を狙う。
一方で、WBCは投手にとって短距離走であるため、ムダなく最短で相手を仕留めることが求められるというわけだ。
麻雀のタイトル戦においては、1半荘単位で勝者と敗者が決まっていく麻雀最強戦が短距離走の最高峰になるだろう。
1局1局ムダにできる局などなく、選手たちはその1半荘で勝つための最善策を探し続けることになる。
一方、RTDリーグは長距離走の部類になる。固定メンツで1年間かけて1人27半荘は、野球でいうところのペナントレースだ。
すると、そこには野球よろしく「遊び球」という概念も生まれてくる。
中でも、絶妙な遊び球を使ってくるのが白鳥だ。
白鳥は、ここから8pをチーしてドラを打つ。
チー自体は意外ではなかったが、ドラ打ちとの組みあわせを意外と感じた。
こういうチーを入れるとき、白鳥はどちらかというとけん制力を持たせて相手の動きを制御しながら状況を探りにいくことが多かったからだ。
一方、今局はといえば、けん制力を捨てて危険なドラを先打ちし、全速力で1,000点を目指している。
これではまるで、小林ではないか。
白鳥「そうそう、剛さんみたいな仕掛けですよね。そろそろぼくに対するイメージもついてきたころだと思うんで、それを壊しといた方が得かなって。こういう手牌のとき、ぼくはドラを引っ張ると思われてるじゃないですか。だから、この辺りでドラを引っ張るときと引っ張らないときを両方見せておけば、後々相手に与える印象も違うかなと」
つまり、白鳥にとっては、この手牌が遊び球だったということだ。
白鳥は続ける。
白鳥「こういう固定メンツの勝負では、とにかく『あいつはこうだ』とイメージを固められてしまうのが損だと思っているので、色んなことをやって、そう思われないようにしたいという思考が一番強いです」
思考はわかるが、ドラの重なりで3,900が見える手牌を明確な遊び球に使うのはどうなのだろうか。
白鳥「このくらいの手牌だと、ドラ先切りによる損得は実際にはあるかもしれませんが、いずれにしても微差だと思ったので、それなら印象をぼかす手牌として使いたいという感覚ですね」
要は、その手牌を遊び球にしていいかどうかの判断である。
野球では、遊び球を投げるタイミングを投手が完全にコントロールできるが、麻雀では与えられた手牌に応じて遊び球にしていいかという判断が必ず生じる。
白鳥に言わせれば、そういった遊び球選びの精度まで研ぎ澄ませていかなければ、RTDリーグでは戦えないということなのだろう。
すると、ドラ先切りの2フーロ1,000点が対局者にも披露される。
これで対局者にとっても、控室で見ている同DIVISIONのメンバーにとっても、放送で観ることになる別DIVISIONの選手にとっても、白鳥に対する仕掛けの幅がアップデートされた。
もっと言えば、RTDリーグ出場選手だけではない。
RTDリーグは、今や麻雀プロ全員の研究対象だ。
そんな者たちすべてに、掴みどころを与えない。
名投手白鳥は、今期のRTDリーグは元より、後の数千試合も見越してこの遊び球を投じているのかもしれないなと思わされた。
こんな遊び球を投じた直後、白鳥がきっちり勝負球を決める。
松本・村上の勝負手をかわす、大きな7,700だ。
すると、今度は門前での勝負手。
白鳥は、チートイツドラ2のイーシャンテンでドラそばの6sを残していく。
9pにもさほど自信があるわけではないため、それならチートイツが少しでもぼけるように6sを引っ張りたい。
さきほどの「遊び球による打ち手評価のぼかし」とは明確に違い、今回のぼかしは「アガるために行う手牌のぼかし」であって、遊び球ではない。
9巡目の1sで6sをようやくリリース。
待ち牌として1sの優秀さという観点でも、危険な6sを処理しておく巡目という観点でも、ここがぼかしに投資できるギリギリのラインというわけだ。
そして、1sが重なると、2枚切れになった西を打ち出して1枚切れの中単騎。
9m7mのターツ落としから入って入るものの、チートイツと断言することは難しい河を作り上げた。
これをダマテンにされては、さすがに止まらない。内川からの6,400を決めてリードを広げた。
続く30回戦でも、白鳥の判断が冴える。
松本のこのオヤリーチに対し、白鳥はなんとホンイツのリャンシャンテンから1pを押した。
5pが宣言牌の早いリーチであるため、若干1p4pが通りやすいが、それでもアンパイの4mをツモ切って白や南の重なり待ちに構えてもいいところ。
この手牌は勝負手という判断だ。
しかし、この3sをイーシャンテンから打つのは少々見合わないか。
ここで、現物になった2mを打ち、いったん回った。
ところが、5,200テンパイならばようやく見合うとばかりに、ここから6mをチーして3sを勝負する。
これに詰まったのが小林。
オヤリーチの現物であるマンズの中で、白鳥に対して最も安全そうな牌は、前巡にチーしていない5mだ。
思えば、あの歯を食いしばった4m残し&1p勝負が生んだアガリ。勝負球の見極めが秀逸だった。
名投手白鳥が、見せ球と勝負球の見事な使い分けで2連勝を飾った。
対局室からガッツポーズで帰ってくる白鳥。
当然話題になるのは、この奇抜な服である。
この男、相変わらず麻雀以外のことは何を言っているのかわからない。
▼▼▼BLACK 27回戦:瀬戸熊、オーラスでの追い上げ▼▼▼
オーラス、2着を目指した多井が盤石とも思われたこの3面張リーチをかけるのだが、オヤの瀬戸熊が追いかけリーチ。
すると、多井が2mを掴み、12,000放銃となってしまう。
逆にこれでトップへの挑戦権を得た瀬戸熊。
1本場でも5,800をアガると、2本場で小林が放銃したことによりトップ逆転を果たした。
▼▼▼BLACK 29回戦:腹を括った内川の覚悟▼▼▼
もう後がない最下位の内川。
前回のオーラス、このマンガンツモで2着になったのだが、前巡に4m切りリーチしているとハネマンでトップだった。
ここまで確かに牌の巡り合わせが悪いのも事実だと思うが、選択も決して良いとは言えないのではないだろうか。
その内川が、ついに腹を括って勝負し始めたように見えたのがこの29回戦だった。
村上のリーチに対し、テンパイのトップ目内川。
村上から6sをポンしているため、8sはわりと通りそうだが、通っているスジが少ないため、ここでは6pを押す。
すると、萩原からも追いかけリーチが入った直後、7sをツモ切り、6sまで勝負していった。
ここは萩原のツモアガリになったが、ついに腹を括った内川が見られ、心が躍る。
そして、オーラスでもマンズのメンホンテンパイ気配のあった村上に対し、内川は7mを押すと・・・
村上のアガリ牌であった5mを引き勝ってトップを死守してみせた。
内川の腹を括った攻めが上位を捉えるか。
残すは後半4節となった。
鈴木聡一郎(最高位戦日本プロ麻雀協会)
■次回5/14(月)21:00からWHITE DIVISION 31、32回戦をAbemaTV 麻雀チャンネルにて放送予定
0コメント