「オーラスでマンガン放銃のラス落ちは、自分の勝ちパターン」 平賀聡彦、RTDリーグ2017優勝記念インタビュー 第2回(全4回)
AbemaTV「麻雀チャンネル」にて放送された、RTDリーグ2017にて、見事優勝した平賀聡彦選手(最高位戦日本プロ麻雀協会)にお話を伺いました。
レポートは、鈴木聡一郎(最高位戦日本プロ麻雀協会)がお送りします。
準決勝に勝ち上がった平賀を待っていたのは、最終日2半荘で勝又との15万点差をまくらなければいけないという厳しい条件だった。
その苦境を、平賀はいかにして乗り越えたのだろうか。
【3日目の最後にイラっとした。そんな自分に一番イラっとした】
― 厳しいメンツでの予選を勝ち抜いて、準決勝に勝ち進んだわけだけど、準決勝って、最後勝又さんと競りになったよね。あのときどんなこと考えてたの?
平賀 「最終日に行く前に、3日目から話してもいい?」
― ぜひぜひ。
相変わらず、1を聞いたら120返してくれる男である。
平賀 「3日目の最終半荘で、猿川さんが大トップを取ったんだよね」
平賀 「あの半荘って、たろうさんがかなり無理しなきゃいけないポイント状況で、たろうさんの座順が猿川さんにとって良い方に出たんだよ」
たろうの下家に座った猿川は、画像のように3フーロ目でたろうからドラをポンして、たろうから8,000をアガるなど、座順が良い方に転んでいた。
平賀 「で、オーラスも、猿川さんがたろうさんから12,000アガってトップを決めるんだけど、それでちょっとイラっとしちゃったんだよね」
― へえ、平賀さんでもイラっとすることあるんだね
平賀 「あるよ(笑) でも、そのとき我に返って、『こんなこと思ってるおれが一番ダメだな』と思ったんだよね。それで、吹っ切れて最終日に臨むことができたってわけ。『どうせ自分には突き抜けることしかできないんだから』って開き直れた感じだね」
― なるほど。そういう気持ちの変化というか、整理があったんすね。
上記の話は、いわば自身のかっこ悪い部分だろう。それにも関わらず、平賀はそんなことおかまいなしに、ありのままの自分を語る。
長年観戦記者としてインタビューをしてきたが、ビッグタイトルを獲った直後に、こういうかっこ悪い話をあまり聞いたことがない。
それを呼吸するかのように普通に話してしまうのが、平賀のかっこ良さだと私は思っている。
【今日は早いリーチをかけ続ける日だと思ってた】
― で、そんな吹っ切れた気持ちで最終日に臨んだわけだよね。吹っ切れたとはいえ、正直なところ、逆転できると思って打ってるもんなの?
平賀 「当然厳しいのはわかってるけど、やるしかないからね。『まくれるか』っていうよりは、『まくってやる』だよ。で、1回戦目でもう並んじゃったんだよね。これはできすぎだった」
平賀は、15万点もあった途方もない差をたった1回の大トップで追いつき、最終戦の着順勝負にしてしまったのであった。
平賀 「最終半荘、試合巧者の勝又さんと着順勝負するのきついとは思ってたんだけど、正直『並んじゃったら有利』とは思ってたんだよね」
― それはなんつーか、勢いみたいなもんってことすか?
平賀 「わかんないけど、それこそムードなのかもしれないね(笑) 逆転しちゃうかもしれない雰囲気みたいのが出るじゃん」
― ああ、それはなんとなくわかる。1回戦目で並んだとき、画面の向こうでもみんな感じてたと思うしね。
平賀 「でしょ?今日のおれはいける!って思ってたよ。それと同時に『今日は早いリーチをかけ続ける日』だとも思ってたよ」
― 何それ?そんな日があるの?(笑)
平賀 「そうそう。序盤にたまたま早い手が入って、リーチが続いたんだよね。それで、『今日はもう早いリーチをし続けよう。そういう日だな』って思った。誰だって、ずっと早いリーチを受け続けたら嫌でしょ?だから、そういう精神的な部分も込みで、とにかく全部リーチしてやろうと思ってたんだよ。『また平賀のリーチかよ』ってゲンナリしろ!って」
― ああ、そういう意味か。それならわかるわ
最終戦、平賀はオヤ番で待ちも悪く打点のないこんなリーチをかけ、勝又から2,000をアガった。
対局後、勝又はここで連荘させてしまったのが敗因だったかもしれないと語っている。そのときには「そうか?」と思ったのだが、一連の早いリーチを平賀が意識的にかけていたのだとすると、その集大成がこのリーチだという見方もできるのではないかと感じた。
― で、結局この後も連荘して大トップで決勝進出したんだよね。
平賀 「そうだね。最終戦4人(白鳥、勝又、平賀、猿川)の中で一番崩れないのが勝又さんだと思ってたから、あの負け方はきついだろうね。本当になんて声をかけていいかわからなかった。でも、だからこそ、勝又さんが『平賀さんに負けたならしょうがない』って思えるような麻雀を決勝で打とうと思えたんだよね」
― いい話じゃないか!で、その後勝又さんとは話したの?
平賀 「決勝最終日後の打ち上げでいっぱい話したよ。遅くまで付き合ってくれて、うれしかったなあ。ほんと面白いんだよ、勝又さん!」
― へえ、意外。なんか、理と感性っていうか、水と油っていうか、考え方が全然違いそうなイメージだよね。
平賀 「それがそうでもなくてね。例えば、打ち上げで『同じ牌姿、同じ捨て牌でもアガれるときとアガれないときがあるの、わかります?』ってみんなに聞いてもさ、村上さんとか他の人はわかんないって答えるんだよ。でも、勝又さんだけは、おれはわかるよって言ってて、『この人、感覚は近いのかもなあ』って思ったよ」
― それ、面白いね。視聴者の人も意外かもしれないけど、麻雀IQ220ってキャッチフレーズからも勝又さんって理論派みたいなイメージあるけど、空気感とかムードみたいのけっこう大事にするもんね。
平賀 「そうなんだよね!とにかく、話しててめちゃめちゃ楽しかったよ!」
【あのラス落ちはおれの勝ちパターン】
― いよいよ決勝になるわけなんだけど、決勝メンツ見て、どう思った?
平賀 「始まる前は寿人くんとぶつかると思ってたんだけど、始まってみると寿人くんが不調だったから、ぶつからなかったんだよね」
― 確かに。2人のぶつかり合いを中心に進むことを予想したファンも多かっただろうね。
平賀 「そうだよね。唯一ぶつかったのが、1回戦目のハネマンかな」
1回戦目、ドラポンの平賀に対してオヤリーチをかけた佐々木が南を掴み、平賀がハネマン直撃でトップ逆転を決めた。
平賀 「あのハネマンのとき、初日にあと1回はトップ取れるなと思ったんだけど、最終半荘オーラスの放銃で2回目のトップ取れなかったんだよね。でも、打ててる感じはあったよ」
決勝初日最終戦オーラス、この手牌から6mを切って白鳥に放銃。トップを逆転された。
平賀 「あのときは、良い方から順に
1.押してトップを取る
2.降りてトップを取る →ポイントは増えるが、今後の判断に難しさ(迷い)が残る
3.押してトップを逃す →2のような迷いが出るぐらいなら、迷いがない点では悪くない
4.降りてトップを逃す →最悪。ポイントも増えないし、迷いも残る
って思ってた。もう1日あるから、迷いが残らないように押したんだよね」
― 確かに、平賀さんの麻雀で迷い始めたら、もう収拾つかなくなりそうだよね。ちなみに、他に印象に残ってる局ある?
平賀 「24,000アガった局は当然として、白鳥くんに8,000放銃してラスまで落ちた局かなあ」
6回戦オーラス、2着目の平賀は3sで白鳥に8,000を放銃し、ラスまで転落した。
― それは、「やっちゃったなあ」みたいな意味で?
平賀 「いや、おれらしいなって。やっちゃったって感じは全然なくて、3s切るのが自分の勝ちパターンだと思ってるからね」
― ということは、良い意味でおれらしいなと?
平賀 「そうそう。ちゃんと覚悟の上で押してるから、それでラスに転落しても全然揺れてなかったよ。むしろ打ててるなと思った」
麻雀において、『このラス落ちが勝ちパターン』というワードを聞いたことがあるだろうか。
少なくとも、タイトル獲得直後の人間の言葉としては初めて聞いたかもしれない。
と同時にこれは、平賀のすべてが詰まっている言葉なのではないかと、私は思ったのだった。
RTDリーグという最高峰リーグで優勝を勝ち取った平賀だが、どのように競技麻雀と出会い、どのようにRTDリーグまでたどり着いたのか。
第3回、平賀の麻雀とのかかわり方へ続く
鈴木聡一郎(最高位戦日本プロ麻雀協会)
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