観る手の気持ちと打ち手のキモチ 決勝 最終節 1回戦レポート
11/23(水・祝)16:00よりAbemaTV「麻雀チャンネル」にて放送された、RTDマンスリーリーグ決勝 第2節 1回戦の様子をお届けします。
対局者は、起家から順に
多井 隆晴(RMU)
藤田 晋(株式会社サイバーエージェント代表取締役社長)
佐々木 寿人(日本プロ麻雀連盟)
瀬戸熊 直樹(日本プロ麻雀連盟)
レポートは、鈴木聡一郎(最高位戦日本プロ麻雀協会)がお送りします。
衝撃的な、多井4連勝の初日から3週間。ついに最終日を迎えた。
この成績を見て、多くの人は「多井の優勝は決まりだ」と思っていたのではないだろうか。
しかし、それは、悉く「観る側の気持ち」である。
私が会場に到着すると、瀬戸熊が、今大会における人和の取り扱いについて、念のため運営側と再確認をしていた(※今大会のアガリ役に人和はない)。
人和の配牌が入った場合、このポイント状況では、基本的に地和を狙うことになるのだが、多井からの直撃なら打点次第では人和でアガる可能性があったということである。
これが意味するところは2つ。
1つは、それほどの大差がついてしまっているということ。
もう1つは、それでも瀬戸熊は諦めていないということだ。
観る側から見えない打ち手の気持ちは、案外単純である。
「勝つためにどうすればいいのか?」
それだけだ。
東1局、その瀬戸熊が、ダブ東と發をポンしてソウズのホンイツ気配の多井に対し、このリーチで勝負を挑む。
多井の点数を奪ってトップを取る、勝つために必要な作戦はそれだけだ。
このリーチが、その第1歩となる…
はずだったが、なんとこの5面張が引けず、流局してしまう。
次局には、佐々木も勝つための選択をしていく。
メンホンチートイツで、5巡目という早い巡目にもかかわらず、2枚切れの北でリーチに踏み切った。
多井から取るにはこれぐらい予想外のことをしなければダメだ。
やはり佐々木も全く諦めていない。
しかし、ここも佐々木の大勝負は実らず、最後の北は王牌に埋もれて流局となった。
各々が勝つための選択をしていく中、拮抗した状況で南入。
すると、オヤの多井が序盤の發を1枚目から鳴き、その後に南もポンしてイーシャンテンまでこぎつける。
5800なら決め手になりかねないが、そうはさせまいとリーチで抵抗したのは佐々木。
これに対し、多井が狙い通りドラを引いて5800のテンパイを組む。
そして、佐々木のアタリ牌6sを掴んだ。
巡目が深いこともあり、安全牌の2mで回ることもできる。
しかし、多井が選んだのは6s勝負だった。
多井は語る。
「相手がヒサトじゃなきゃ打たないよ。あと、入り目が7sじゃなくて4sだったら2m切ってたかも。2900じゃ決め手にならないしね」
相手のリーチ者は、トータルラス目の佐々木である。ここで佐々木に放銃しても、佐々木がトップを取ってくれるのなら優勝に近づくとさえいえるのだ。
佐々木をトップまで押し上げるか、自分がトップになるか。
多井としては、そのどちらかが勝つ道なのである。
ウラが2枚乗って8000となったが、6sを切って前に出るとき、8000の失点は織り込み済み。
多井としては、「放銃という失敗」ではなく、「佐々木をトップに押し上げる方の成功」といったところである。
すると、次局では、多井がこのリーチ。
自分がいけるなら、まだトップを狙う気である。
ここに佐々木が追いかけた。
佐々木は言う。
「入り方がすごく良くて、待ちも良かったからリーチしちゃったんですよね」
佐々木は、微妙な表情でそう言った。
確かに、トップ目で現物を切ってテンパイとあらば、ダマテンもあるかもしれない。
しかし、手牌の主が佐々木なら、それでもリーチが自然だろう。
結果的に、佐々木が掴んだ2sは、ダマテンならば5sと入れ替えられた牌だ。
それでも、私は、佐々木にはこれをリーチしてほしい。
これが痛恨のウラ3で12000。先ほど佐々木に託した8000におまけをつけて取り返した多井が、なんと再度トップ争いまで戻ってきた。
これで、多井の目標は定まった。
「自分がトップを取る」である。
そして、オーラス。
まずは1300・2600でトップになる西家の藤田が、ツモれば文句なしのリーチをかける。
ここに、ラスオヤの瀬戸熊も真っ向勝負。
チートイツのイーシャンテンから、無スジの2pを勝負していく。
しかし、不運にも、この2pが次巡にかぶってしまった。
すると、この2pに、最悪の方角から声がかかるのだから、たまらない。
前巡にダブ南を引いてテンパイしていた多井が、2pに間に合って8000。
5連勝目を飾った。
視聴者、スタッフ、戦況を見守る誰もが、多井の優勝を確信したような空気になっていたように思う。
そんな中、控室に戻ってくるなり、神妙な顔でつぶやいた多井の一言が、非常に印象的だった。
「やってるほうは、これでも怖いんだよ」
そう、これが、観る側からはわからない「打ち手のキモチ」だ。
その怖さを払拭するには、いつも通りの麻雀で勝ち続けるしかない。
少しの休憩の後、多井が次の半荘に向け、対局場に向かった。
鈴木聡一郎(最高位戦日本プロ麻雀協会)
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