「麻雀で大事な3つの視点とは」 多井隆晴、RTDマンスリー優勝記念インタビュー第1回(全3回)
AbemaTV「麻雀チャンネル」にて3月から11月まで放送された、RTDマンスリーリーグ2016にて、見事優勝した多井隆晴選手(RMU)にお話を伺いました。
インタビュアーは、観戦記を担当しました鈴木聡一郎(最高位戦日本プロ麻雀協会)が務めます。
【メシを食わないと麻雀勝てないよ】
あの優勝から2週間。
12月のとある月曜日17時30分、都内のファミリーレストランに多井がやってきた。
― おつかれさまです。すみません、こんなお忙しい日にお時間いただきありがとうございます。
多井はこの日、収録を2つこなし、さらにこの後19時より生放送を控えている。
多井「いえいえ、全然(^O^)」
― とりあえず、何か食べときます?今日、あんま食べてないですよね?この後も放送ですし」
多井「そうだね。時間もあるし、なんか食べようかな」
メニューを広げながら迷っている様子の多井。
多井「軽く食べられるやつがいいんだよね」
― カツサンドとかありましたよ?
多井「そうね、そういうのになっちゃうよね。カツサンド…
と、何かなんだよなあ」
そう言うと、多井は軽く、カツサンドとマカロニグラタンを注文した。
なるほど、カツサンドとグラタンは、確かに個別には軽食の類であろう。
― 多井さんって、よく食べますよね?
多井「そうね。メシ食わないと、麻雀勝てないから。ほんとに。これはポリシーみたいなものかな」
― ちっちゃいときからよく食べる子だったんですか?
多井「いや、全くそんなことなくて、むしろここ10年ぐらいだよ、すごく食べるようになったの。10年ぐらい前に、土田さん(土田浩翔・最高位戦日本プロ麻雀協会)が北海道のゲストによく連れていってくれて、そのとき一緒にごはん食べてたんだけど、土田さんが大食いでさあ…
負けてらんねえって思っちゃったんだよね」
う、嘘だろ。。。一流はこんなところまで負けず嫌いなのか!?
多井「そっからだね、すごく食べるようになっちゃったの」
― なるほど、そうなんですね。ちなみに、対局前に食べるものとかあるんですか?
多井「対局前には肉を食べるね。前日か当日に必ず。どうしても食べられなかったときでも、コンビニでフライドチキンとか買って食べるよ。今まで続けちゃったからっていうのもあるんだけど、肉食べないと闘争心が湧かないんだよねえ」
一流とは、必ず試合前のルーティンを持っているもの。効果があるかどうかはわからないが、みなさんも試してみてはいかがだろうか。
【とにかくレベルが高くて楽しい番組を作りたかった】
― では、本題に移りますが、RTDマンスリーリーグに参加するにあたり、意気込みとかってどんな感じだったんですか?絶対勝ってやるって感じとかはあったんですか?
多井「絶対勝ってやるみたいなものはなかったかな。そりゃもちろん勝つために全力は尽くすんだけど、それよりはとにかくレベルが高くて楽しいコンテンツを作りたいって意識の方が強かったかな」
― というのは、AbemaTVのような新しい媒体で、麻雀という1つのチャンネルまで立ち上がった中の主力コンテンツだったから、っていうのが大きいってことですか?
多井「そうだね。藤田さんが人生を賭けて立ち上げたAbemaTVで、せっかく麻雀番組というチャンスをいただいたわけだよね。しかも、AbemaTVでやる最初のレギュラー麻雀番組だったわけじゃない?最初だし、絶対こけられないって思いが強かったね。だから、視聴者のみなさんに楽しんでいただけるように、選手としてレベルが高い打牌をするのはもちろん、解説者としてレベルが高いだけじゃなくて、純粋にしゃべりでも楽しませたいっていうのがあったかな」
勘違いしないでいただきたいのは、決して勝ちにこだわることを捨てたわけではなく、「自分が最高のパフォーマンスを発揮すれば必ず勝ちにつながる」という自信があるからの思考だということ。
その上で、解説者としても一流であろうとする多井は、やはり麻雀プロとして超一流なのであろう。
↑AbemaTV「フリースタイル雀ジョン」などでも、解説として番組を盛り上げている多井(写真左)
【マークしていたのは藤田さん。ほんとに強いから】
― 予選開始前、マークしていた選手とかっていたんですか?
多井「藤田さんだね。ほんとに強いから。藤田さんにだけは負けられないって思ってた。藤田さんのことは予選からずっとマークしてたよ。麻雀って、最後は人間力だと思うんだよね。あと、局面を俯瞰で捉えることができる数少ないプレイヤーだと思ってるからね」
― 俯瞰で?
多井「そう、俯瞰で。客観視っていうのかな。ぼくが思ってる麻雀で大事な3つの視点っていうのがあるんだけど、それは自分の視点、相手の視点、客観的な視点で、この3つの視点を持ってる人が強い人だと思ってる。藤田さんは、相手の心理とかもよく読んでくるし、俯瞰で局面を捉えて客観的に評価を下すのが本当にうまいよね。だから強い。脅す仕掛けとかもよくやるじゃん?」
― ああ、それ、わかります。遠くて高い仕掛けとか、周りに仕掛けを促すための仕掛けとか、効果的に使ってますよね。
多井「そうそう。あれをやられちゃうと、競技麻雀に慣れてる人ほど負けちゃうんだよね。だから、藤田さんのことをわかってるぼくが止めにいくしかないかなと思ってたわけ。麻雀って自己管理と自己否定のゲームだと思ってるから、客観的に自己否定ができる藤田さんが強いのは当たり前だよね」
― じゃー、準決勝、決勝でもやっぱりマークしてたのは藤田さんですか?
多井「当然そうなるね。自分に余裕があれば、準決勝、決勝に藤田さんを残したくなかったよ」
― そんな意識があったんですね。ちなみに、予選で印象に残っている局とか半荘とかってあります?ぼくは、放送対局じゃないんですけど、藤田さんのメンチンに24000放銃した半荘が印象に残ってるんですよね。
BLACK DIVISION4節2回戦B卓、多井は持ち点▲900点から、ドラ5mアンコのリーチをかけた。
しかし、前巡にダマテンを組んでいたオヤの藤田に5pで放銃し、24000を献上。
この半荘を▲34200点という屈辱的点数で終えた。
多井「あれね。ぼくもあれは印象に残ってる。まだ藤田さんにテンパイ入ってないと思ってたんだよね。このときに限らず、『切るなら今のうち!』が通用しなかった。藤田さんって、間合いが掴みにくいんだよね。あと、オーラス、藤田さんに5200放銃してラスまで転落した半荘も印象に残ってるなあ。きつかった」
BLACK DIVISION4節4回戦オーラス、多井がこの広いイーシャンテンから藤田のリーチに一発で3sをツモ切ると、5200放銃。多井はラスまで落ちてしまった。
そして、ついに多井は8人中最下位まで転落。
残り12回で400ほど勝たなければならないという絶望的な状況に追い込まれてしまう。その直後の表情がこちらである↓
― こういう状況に追い込まれたことって、正直今までないですよね?
多井「そうだね、初めての経験」
― ですよね。こういうときって、精神状態の保ち方とか、どうしたんですか?
<第2回、絶望的な状況での精神状態の保ち方に続く>
鈴木聡一郎(最高位戦日本プロ麻雀協会)
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